薬剤の制がん作用と関連する遺伝子発現変化のDB化と公開
(担当:馬島 哲夫、冨田 章弘)
抗がん剤スクリーニング支援のための基盤情報として、化合物の制がん作用と関連する遺伝子発現変化の情報を提供することを目的としている。有望な分子標的薬、抗がん剤などについて、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析により、化合物処理した際のがん細胞の発現プロファイルを取得し、制がん作用と関連する遺伝子発現変化をデータベース化する。
【公開データベース】
分子標的薬をはじめとする、典型的抗がん剤、典型的標準阻害剤について、約100種類の化合物を目標にデータの取得を進めている。これらについては、未処理コントロールとペアワイズに解析し、各薬剤処理によって発現変化する遺伝子の情報を順次公開していく。
- 代表的な各種抗がん剤処理後、がん細胞において変動する遺伝子群
- 同一の作用機序をもつ化合物群に共通する遺伝子シグニチャー
- 解析に用いた抗がん剤(薬剤)の入手先、溶媒、標的分子等の情報
また、今回構築したデータベースを用いて、遺伝子発現パターンから化合物を探索するシステムを構築したのであわせて公開する。
【方法】
ヒト結腸がん細胞株HT-29を6-well plateに播種し、20時間培養後、薬剤を添加し、さらに6時間培養する。なお、薬剤処理濃度は、GI50(50%増殖阻害濃度)値の3〜10倍で、48時間接触で80%以上増殖阻害する濃度を基本とする。薬剤処理した細胞より、RNeasy Mini Kit (QIAGEN; Cat No. 74104)を用いてRNAを抽出する。抽出したRNAは、Agilent 2100 Bioanalyzer、 RNA 6000 Series II Pico Kit (Agilent; Cat No. 5067-1513)を用い、クオリティチェックする。その後、GeneChip 3’ IVT Expression Kit (Affymetrix, 901229)、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array (Affymetrix, 900467)を用い、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行う。
【データについて】
分子標的薬をはじめとする、典型的抗がん剤、典型的標準阻害剤について、約100種類の化合物を目標にデータの取得を進めている。これらについては、未処理コントロールとペアワイズに解析し、各薬剤処理によって発現変化する遺伝子の情報を順次公開していく。こうした遺伝子発現情報は、Pharmacodynamic (PD) マーカーや薬剤感受性関連遺伝子の同定に有用であるばかりではなく、Connectivity Map(解析例、解析手順例を参照)を用いることで、同じ遺伝子群の発現を変動させる、類似の作用を有する化合物の探索にも応用可能である。 ぜひ、有効にご活用ください。