EMT (Epithelial-Mesenchymal Transition)制御活性評価
(担当:井本正哉)
EMT(上皮間葉転移)は、上皮性のがん細胞が、より運動性の高い間葉系細胞の表現型を獲得し、転移を起こしやすくなった状態をいう。またEMTを起こした細胞は apoptosisに抵抗性になる。したがって、EMTを制御することは新しいがん治療戦略と考えられる。これまでTGF-βを中心としたEMTの検出系が知られており、さまざまなTGF-βシグナリングの制御物質にEMT阻害活性が報告されている。そこで、ここではEMTを起こしたがん細胞を上皮細胞の表現系に戻す活性(MET促進活性)に注目し、テスト化合物のMET促進活性を評価する。

【方法】
[概要]第1評価として,検体がTGF-βにより誘導されるLoVo細胞の細胞間接着消失を回復させるかを調べる.細胞間接着を回復させた検体について第2評価を行う.第2評価は検体がTGF-βにより誘導されるLoVo細胞のE-cadherin発現量減少を回復させるかを調べる.
[第1評価系]LoVo細胞を48ウェルプレートに播き,24時間後にTGF-βを添加する.48間培養後サンプルを添加し,さらに48時間後に細胞間接着の有無を顕微鏡観察にて調べる.陽性対照にはTGF-β RI阻害剤であるSB431542を用いる.
[第2評価系]LoVo細胞を6ウェルプレートに播き,24時間後にTGF-βを添加する.48時間培養後サンプルを添加し,さらに48時間後に細胞を回収する.その後抗E-cadherin抗体によるウェスタンブロットを行い,E-cadherin発現量回復率を評価する.陽性対照にはTGF-β RI阻害剤であるSB431542を用いる.
【活性の評価】
第1評価系では検体を最終濃度10 μMになるように添加し,細胞間接着の有無を判断する.細胞毒性が観察された場合は10 μMから4段階の3倍希釈系列を作り,再度細胞間接着の有無を判断する.第2評価系では10 μMから4段階の3倍希釈系列を作りE-cadherin発現量回復率を評価する.30 %以上回復させたものを有効と判断する