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アンドロゲン受容体シグナル阻害活性の検定

(担当:清宮啓之)

 前立腺がんの発生および生育は、男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体(androgen receptor, AR)を介した細胞内シグナル伝達に依存する。アンドロゲン産生阻害薬や抗アンドロゲン薬を用いた内分泌療法は、ARシグナル伝達を遮断することにより、すぐれた制がん効果を発揮する。しかしながら、これに耐性の予後不良がんが数年後に再発することが多く、根治療法の確立が急務とされている。再燃性前立腺がんでは、抗アンドロゲン薬で活性化してしまう変異型ARや、アンドロゲン非依存的なARシグナルが作動していることが多い。このように、前立腺がんの発生・進展・再燃のすべての段階にARシグナルが関与しており、従来の内分泌療法薬とは異なる、新たなARシグナル阻害薬の開発が望まれている。本系は、前立腺腫瘍マーカーであるPSA(prostate specific antigen)遺伝子のプロモーター活性を指標に、検体のARシグナル阻害活性を評価する。

【方法】

 AR陽性ヒト前立腺がん細胞株22Rv1をアンドロゲン非存在下で3日間培養し、PSA-Luc[PSA遺伝子のエンハンサー・プロモーター領域(-5824 to -1)をホタル・ルシフェラーゼ遺伝子の上流に接続したもの]および内部コントロールのCMV-RLucを導入する。24時間培養後、細胞を96ウエルプレートに播種する。翌日、検体を含む培地に交換し、さらに1時間後に最終濃度 1 nMのアンドロゲン(ジヒドロテストステロン:DHT)を添加する。24時間培養後、レポーター活性をルミノメーターにて測定する。

【活性の評価】

(1)一次評価
検体は1μM、10μMの濃度で細胞に添加し、DHT存在下でのレポーター活性に対する阻害効果を評価する。「PSA-Luc阻害活性が50%以上かつCMV-RLucの阻害活性が20%未満」であった検体について、特異的ARシグナル阻害活性陽性と判定する。1μMの濃度でPSA-LucおよびCMV-RLucの双方が50%以上抑制された場合、検体濃度を0.01, 0.1μM(またはそれ以下)に下げて再試し、「PSA-Luc阻害活性が50%以上かつCMV-RLucの阻害活性が20%未満」の条件を満たしたものは陽性と判定する。

(2)二次評価
一次評価で陽性と判定された検体のみについて実施する。一次評価で用いた検体濃度を参考に3段階の10倍希釈系列を作り、再度レポーター阻害活性を測定してIC50値を算出する。PSA-Luc活性値はCMV-RLuc活性値で標準化し、検体未添加時の値を100%とする。IC50値が0.1μM以下=「有効 (+++)」、0.1-1μM=「有効 (++)」、1-10μM=「やや有効 (+)」と判定する。